音楽/葉leaf
も思えた。もちろん、哲学や物語以前の詩を最もよく表すのが音楽の細部であった。音楽は流れる。それは過去の流れでもあり現在の進行でもあり、さらには未来の先取りでもあった。
大学を出てから今度はロックをよく聞くようになった。ロックはとても伝わりやすい。クラシックほどの包括性はないが、狭い通路を疾走するような切実さとスリルがあって、自分の身体までリズムで切り刻まれていくかのように感じた。何よりロックは人間の負の側面を解放するものだった。社会常識から隠蔽される衝動や不条理、絶望や憤怒、停滞や悪意、そういうものが泳げる大海を生み出し、社会の健康的な抑圧を迂回して人間の真の姿を暴くものであった。また、もの
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