人と蛇の寓話/まーつん
 
をした
一人の青年が
大蛇に飲み込まれる奇観を
この目で見られないのが
私にとって残念ではあったが
当事者ゆえ、やむをえまい

だが蛇の胃袋の中で
私は生き続けた
その強酸の消化液でも
溶かしきれないエッセンスが
私という存在には、あったのだ

そして
永遠に明けない夜の闇に
この目を見開きながら
私は、自分が人間であることを
徐々に忘れていった

蛇もまた、私の姿を借りて
人の世に生きはじめた
永遠に沈むことのない
落日の栄光を
その目に焼き付けながら
そして、己が蛇であることを
徐々に忘れていった

私の身体は細くなり
鱗を生やし
奴の
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