人と蛇の寓話/まーつん
 
 甘味な餌のように
 我が魂の残りを
 端から齧り取っていく
 ということになる

 エデンの園にいたころから
 お前は偽りの名手
 生まれながらの演技者だ 
 その見てくれを
 美しく装うのもお手の物
 表の世界の味に触れ
 その知見を広げるといい ゛

蛇は満足げに頷くと
とぐろを撒いた卓上で
物憂げに身じろぎし
鎌首をもたげた

その身体に絡みついた
私の胃液が褐色の糸を引き
焦げ臭いようなにおいを
いまだ部屋中に放っている

蛇の奴は予想どおり
私の身体を噛み砕くことなく
足の先から丸飲みにした
灰色のスーツを纏い
憔悴しきった顔色をし
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