電脳と死の雨/hahen
 
そしてぼくはぼくを失う。それ以降は無い。無のままであるべきだとぼくも思うけど、雨に打たれた後のような冷え切った身体のままでは、何も無いものをその通りに享受することも出来なくなるかもしれない。おじさんは死んでからもぼくに電話をかけることができた。何も無いなんてこと、無いのかもしれない。でもやっぱり何も無いままであるべきじゃないか。ぼくが見つけた異世界はたまたまぼくに見つけられたことで対象としての実存を確保できたけど、ぼくたちみたいにはなれない。そうじゃなくて、ぼくたちじゃない、ぼくたちのような者がいてくれさえすれば、雨に濡れることのなかった世界がどこかにあって、ぼくみたいに凍えることのないひとびとが
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