電脳と死の雨/hahen
とがどこかに存在してくれさえすれば、そうあってほしい、そうあってくれたなら今度こそ、電波と二進数と液晶画面とデジタライズされた素子で支えられた、全世界で共有されるスペースなど、足元から、その地盤から、瓦解してしまうだろうから。ぼくたちが雨に濡れる。ぼくが、雨に濡れる。しかし友人は濡れない。大切なものを自分の代わりに容易に差し出せるシステムが、ぼくたちに備わっていなくてよかったと思う。今日はとてつもなく、そして圧倒的なまでの、快晴だった。大寒を迎えて凍えていた昨日の夜、そしてこの一週間が嘘のようだ。
スマートフォンを取り出し、画面をフリックする。待ち受け画面の日付が何十時間経っても動かない。
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