北の亡者/Again 2014睦月/たま
 
は参加できず、北アに向かったパーティは四名だった。入山三日目、天候に恵まれて涸沢岳から奥穂岳へと、快調に縦走していたパーティに思わぬ事態が起こった。パーティのトップを歩いていた熊ちゃんがアイゼンを岩角にひっかけて転倒し、そのまま狭い稜線から滑落して行方がわからなくなった。一〇〇〇メートル余りは滑落しただろう。雪深い沢の底で、熊ちゃんは意識を失ったまま凍死した。
 六甲山で滑落する私を止めてくれた熊ちゃんを、私は止めることができなかった。もし、私が山行に加わっていたら、熊ちゃんの滑落はなかったかもしれない。そんな意味のない想いを抱いたまま、その年の夏は仲間を募って、熊ちゃんの追悼山行になった。奥穂
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