二十代/岩下こずえ
子を掴みあげる。何も言わず、乱暴
に、一方的に、その子を街のどこかへ運んでゆく。どこへ連れてく気なんだろう。でも、も
う抗えない。大男は、陽気な歌を歌いだし、その子を手に掴んだまま、遊園地にある海賊船
とかスペースシャトルのアトラクションみたいに、大きく腕を振って歩く。ぐるぐる、ぶん
ぶん、スペクタクル。みんな、おおよそこんな感じで、大男たちにむんずと掴まれて、 街の
どこかへと運ばれてゆく。怖くて悲鳴をあげる子もいれば、うきうきして馬鹿みたいに笑っ
てる子もいる。私は、もう一度、でも今度は大声で叫びながら、訊く。「本当に! ここが
! 私た
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