ワールドエンブリヲ/ゴースト(無月野青馬)
「私」は思っていた
餌場も
無くなったと思っても
また別の餌場が見付かるようで
生前、「猫」の餌場が消えることは終ぞなかった
ニンゲンもパンも蚤も一緒だと
「猫」は思ったに違いない
ニンゲンもパンも蚤と一緒で
死んでも死んでも
また生まれて来るし
パンも必ず売れ残るし
同質の物だと思ったに違いないと
「私」は思っていた
朝、「猫」は
どんな気分だったのだろう
「猫」は少なくても15年間、朝を迎えていた筈だった
「猫」は
最後まで
生きることに
特別な意味を感じなかったのか
許せないことは何も無かったのか
「私」は「猫」に訊きたかった
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