ない日記の感想/渡邉建志
 
しまうので、一つを選べばすべてが消えてしまうのだと思う。わたしが見ていた映像が、一部だけ抜いて選び出しても、何も現れてはこない。あまりにも即物的になってしまう。それだけ抜いたって。



わたしが泣きそうになりながら読んでいた夜の集まりの日記はどの日だったのだろう。彼女の文の霧は深くて深くて。泣かないでいることなんてできるだろうか、こんなに深い霧のなかで、あの人の声だけ聞こえて、泣かないわけにいくだろうか。



一言ずつおっていくこともできないままに、わたしは、ほそくでもこころのそこから、「うううううううううう」という嗚咽が自分の底からきこえてくるのを止めることができない
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