ない日記の感想/渡邉建志
でいたのも夜だった。刺すようなロンドンの夜で蕩けるようになりながら読んでいたことを思い出す。どうしてだろう、東京で読んでいた時も、京都で読んでいた時も、そこまで蕩けて読まなかったのに。最初から読んだことが何か印象を変えたのだろうか。一つずつ読むよりも、ずっと流れてこの人の魂の遍歴をおっていくほうが、ずっと。
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なにかを書こうと思って、手元に保存されているあの人の文章に目を通しているだけで、なにかよくわからないものが立ち現れてきて、胸が痛くて死んでしまいそうになる。それは字の形や文の形や余白の取り方から蒸気のように立ってくる物で、それだけで胸が甘くなってしまって、なにかこみあげてしま
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