手紙を書こう/まーつん
文をしたためる
冴えない男を
身の程知らずと笑うなら
出されないままの
無数の手紙が
抽斗の中で泣くだろう
こんな世界に
私達の出る幕はない、
と嘆いて
そんな世界では
王は孤独だ
等身大の人として
誰かに届け得る
言葉を持たず
地位に背いて
湧き上がる生の感情を
ぶつける相手も、機会もない
そんな世界では
名もなき者も
また孤独だ
夢見る人としての声を
聞き入れてくれる
誰の耳も見つからず
群衆から抜け出して
個としての自分を
主張する機会もない
社会の一員
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