あの日覗き込んだ照準器の十字架Destiny/北街かな
 
た。これだけたくさんあったらコレを耳だと信じる人は誰も居なくなることだろう。僕はかなしくなって涙がこみあげてきた。たくさんなんて日常語句がふさわしいとも思えないくらいたくさんの猫耳がヘリから生えているのを見て、嗚咽がとまらなくて、遂に血液をぼたぼたと吐いた。おえげふごぼぼしたしたと血と唾液と胃液と粘膜と胃壁と落胆の混ざったやつが喉からどんどん逆流してくる。
 僕は苦しくてひとおもいに叫んだ、あああああ。叫びは市街地に轟いてガラス製のものを全て割りつくし、峡谷に轟いて岩を片っ端から砕きつくした。一週間くらい叫んでいたら村長の次男の嫁さんと百歳になる村長の叔母さんとあと他に村長関係のあの人この人に、
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