「事件とウイスキー」/mizu K
で
そのまた先の岬の突端でバグパイプを吹いている人がいたがちょっと目をそらしたあいだに消えていた
ひとりは海に落ちたと言い
ひとりは空をのぼって雲に消えたこの目で見たと言い
ひとりは地面に沈んだ楽器だけが残っているだろうと言い
わたしは永久機関になってしまったウイスキーグラスのことを考えていて
床に流れ落ちた琥珀色の液体は椅子の下を通り、机の脚をまわってドアへむかい、すきまから廊下に出ると気づかれずに窓から外へ、庭を横切り、石垣の継ぎ目から通りへ出、建物の脇から階段を上り、停車した車の列をすりぬけ、わき道へそれ、C. カーソンの石畳、また小さな路地、踏み固められた小道をたどり、しばらく
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