「事件とウイスキー」/mizu K
 
らくすすんで、ある家の方へ、ガルシアの方へ

またある日ひとり窓辺に腰掛けて手もとの琥珀を転がしながら眺めていた空の向こう、雲の流れる風景から
なにかが垂直に落下し続けるのだがその勢いがまったく衰えない
それは放りなげられた小石かもしれないし力つきた渡り鳥かもしれないし将来灰色の羽のはえる少女なのかもしれないしここから見えるのは「イカロスの墜落のある風景」の風景なのかもしれない
森の中にある発電所の屋根に穴があいたと人づてに聞いたのはしばらくしてからだった
だれかにとっては人生を左右する事件だったのだろう
だが別のだれかにとってはささいな出来事になるのだろう
魔法瓶にさした花々はとっくにしおれていた



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