エロ本曼荼羅/
 
ぐに鍔の下はヌゥッとまた一辺の暗闇に戻って、自転車は走り出していった。彼女はこの数秒の会話を聞いていなかったようで、やはり蹲っている(女の顔はもう覚えていないし、すべて同じように見える。暗がりで口元が見えると、いけない、と思う。瓶の中身が溢れ返って、自転車の倒れる音がする。おれはサンダルを脱ぎ捨てたまま逃げ出して団地沿いの草原を、)。カラコンを付けていない彼女の目をまじまじと見たことがないおれの頭の中では、暈されていく彼女の顔が中空に浮かんでいた。マシーンが少し軋みを上げ(駆け、)た。襟を合わせながら、自分の腹を覗き込んだ。マシーンの内臓にはおれの部屋がミクロに圧縮されている。時おりあぁとかうぅと
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