エロ本曼荼羅/
 
ぅとか言ってひくひく動く。呼応してビルが揺れる(友達の声が聞こえる)。部屋の中の軋みがそのまま開陳されて空間に伝わるのだ。おれの部屋と都市は互いに食い合っている。空き瓶(おまえの投げた)や、弁当のゴミ(やつらが食った)や、吸い殻(おまえが押し付けた)や、切れた弦(やつらが刺した)の、(おれたちが)耐えきれない都市のために類感呪術が行われているのだった。夜が近づいてきた。彼女とおれがだんだんぼやけてくる。自転車の群れは(亡霊のように過ぎて)、だんだんその列が重なって((直線)になってくる。その部屋のなかに彼女のカラコンがあるのを知って(知っていた、知って))いる(みどりの、みどりの色の)。そして(彼女)が部屋の(なかに、部屋のなかにある)エロ本の写真に写された都市に彼女がいることも。嵐が、やっ(てきた。薄暗い雨の(帳を押し退けて)彼女が立ってこ(ちらを見(る。
「なかった」

夜が落ちる。
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