波の下の月/まーつん
 
んでいく

 やがて息が苦しくなると
 イルカが一頭、寄り添ってきて
 口移しに貰う空気に
 小さな肺が、息を吹き返す

 そうして、ようやっと
 星の背中に伸ばした
 幼い指先がタッチ

 でも月は
 気付いた様子もなく
 身じろぎひとつ返さない

 少年は
 硬い背中にすがりつき
 頬を押し付け目を閉じる
 闇を貫く光の向こう
 月の想いが透けて見えた

 ソーダの泡のように
 色とりどりの花火のように
 パチパチ、パチチパチと
 燃えていた

 この衛星は、きっと
 地球が生まれ落ちた時から
 多くの喜びや 悲しみを
 見届けてきたの
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