波の下の月/まーつん
気持ちも軽くなって
ぷかりと浮びあがれば
見上げる夜空が懐かしく
ふわふわ帰っていくだろう
四
帽子をひょいと
船底に放ると
少年は身を躍らせ
水に飛び込む
足を搔き、水を蹴りつけ
痩せた体をしならせて
月を目指して
深みへと
すれ違う影の正体は
光に惹かれ辺りをうろつく
有象無象の水棲生物
クジラの巨体を潜り抜け、
燕尾服のペンギンに挨拶し、
光るシャチの牙をよけ、
銀の鱗の小魚を掻き分け、
読書灯の傘みたいな
クラゲの間を、
ぐいぐい
ぐいぐい
進んで
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