波の下の月/まーつん
 
気持ちも軽くなって
 ぷかりと浮びあがれば
 見上げる夜空が懐かしく
 ふわふわ帰っていくだろう

 四

 帽子をひょいと
 船底に放ると
 少年は身を躍らせ
 水に飛び込む

 足を搔き、水を蹴りつけ
 痩せた体をしならせて
 月を目指して
 深みへと
 
 すれ違う影の正体は
 光に惹かれ辺りをうろつく
 有象無象の水棲生物

 クジラの巨体を潜り抜け、
 燕尾服のペンギンに挨拶し、

 光るシャチの牙をよけ、
 銀の鱗の小魚を掻き分け、

 読書灯の傘みたいな
 クラゲの間を、

 ぐいぐい
 ぐいぐい
 進んで
[次のページ]
戻る   Point(11)