無題/すみきたすみれ
 
るものなのか、
試してみるといい、
石像のように、脆く、一撃の鑿で血も出さずに
崩れ去る、数あるうちの一つの術を。

鼻の奥では知らないうちに密約が交わされている、
右の鼻孔、左の鼻孔、どうやって空気を吸い込むのか、
争わずにともに眼の下で、堂々と分け前にありつく、
歯は軋んで骨を打ち鳴らしている、
眉間に皺が寄っている、
それでも笑っていると、思われるなら
笑っていてもいいかもしれない。
それとも自責の念は、
確かに誰かを責めていると言えるかもしれない。
確かに今も、掻き毟っている、爪が
忙しなく皮膚を剥がしていく。

自動車事故を拝み倒した夕方に降る雨が、

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