無題/すみきたすみれ
 
生きたまま肉体を裂かれ、湧き出た
痛みに勝った恥辱が顔を白くした。
アレルギー性の皮膚を爪が掻き毟って、
顔の裏に血を滲ませ
瞼の下に血を走らせ
口の中では、オブジェのような舌が
鶏冠のように膨らんだ。
遠くから浮来した綿毛が耳孔をふさぎ込み、
熱心な煙突掃除夫が帰って
穴を黒く塞いでしまったようだった。

トランプの手札をすべて捨て、
山札から引き直すことができれば、
経験というものがいかに無用か思い知らせることができるのに、
知らない、捨て方を知らない、
何しろ惜しめばワンペアさえもが綱に思えるものだから、
無表情のままなら、この苦境も
何事でもないと思えるも
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