雨/アマメ庵
 
つも笑って そして着いて来ただけだった
ぼくは怖かっただけなんだ
雨の中で転んで 痛くて 惨めな気持ちだった
そして彼に対して 怒った
ぼくは 彼に怒っていたんじゃない
彼を支えてやれなかった自分に腹を立てていたんだ
それでも一度でた言葉は 戻らない

ぼくは歩いた
雨は涙を洗った
雨音は 足音を隠した
ぼくが振り返ったとき 彼が着いてきていれば良いと思った
彼が着いてきていることを願った
彼が着いてきていないことが怖くて 振り返ることができなかった
ぼくは歩き続けた

もうあたりが暗くなるころ
ぼくは振り向いた
彼の姿を探した
ぼくのすぐ後ろに 彼はいなかっ
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