雨/
アマメ庵
かった
しかし 向こうの木の まだ向こうに 彼らしい影が見えた
影は ぼくが振り返ったことに気づいたのか きょろきょろとして道脇に屈んだ
ぼくは 影に向かってザックを差し出した
重たいじゃないか
影は慌てて駆け寄ってきた
どたどた
不恰好な走り方だった
影は 彼だった
彼はぼくのところまで来ると ザックを受け取って
泣いた
重たいじゃないか
ぼくはそう言うと 彼に背を向けた
そうて 泣いた
彼は着いてきた
雨は小降りになっていた
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