冬に花火はやらない/一尾
 
たのかもしれない電車が人身事故で止まるたびにせいちゃんが線路に飛び込んだのではないかという予感を感じるようになったそしてその根源にあるのは恐ろしいことに不安よりも「そうであって欲しい」という希望だった死にたい死にたいと繰り返すせいちゃんに死ぬな死ぬなと言いながら死ぬなという音を発するために口を回すのにも倦んできて途中から早く死ねと言いたかった私の居ない所で一人で勝手に死んでほしかった私の人生からせいちゃんがログアウトしてくれることを切に願ったそれでも不思議なものでまだ手は繋いだままだった


せいちゃんは夢見がちな少女だったので冬に花火をしたいと私にねだった
私も素敵だと思ったので了解した
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