冬に花火はやらない/一尾
奇妙な気持ちでいったい自分の何がそこまでせいちゃんに働きかけているのか分からなかったけれど私はある種類の人から期待を掛けられやすい性質があって彼らは自分をどこか遠くに浚ってくれそうな存在として私のことを見ているようだったしかし実際の所私は誰一人としてどこかへ運んだことはなくそういったものはみな幻想に過ぎなかった多分せいちゃんも似たような期待を私に掛けていたのではないかと思う
おかしくなったせいちゃんが頻りに死にたがるのを私は許さなかったが死ぬ必要はないと言う一方でそろそろ縄を回す手が疲れているのを感じていた腕が痺れて感覚が無くなっていたあんまり長いこと回しすぎたので指の数本は飛んでいたの
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