鎌倉 縁切り寺/和田カマリ
はどこの観光地にもあるような
代わり映えのしない普通の寺だった
迷うことなく賽銭を掴み
箱に投げ入れようとした僕に
母は「待って。」
ものすごい顔でこちらを見た
母はそれきり何も言わなかったが
ずっと幼子のように唇を突き出していた
そんな事はなんでもない僕は
ワンコインを惜しみなく投げ
縄を揺らし鈴を鳴らした
そしておざなりに
「縁を切ってください。」
心を込めずにお祈りした
その後の流れでホイと
母にも賽銭を渡してやったが
彼女はもじもじしていて
なかなか投げようとしなかった
何を躊躇しているんだろう
自分で言い出したことなのに
まあ今に始
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