鎌倉 縁切り寺/和田カマリ
 
に始まった事ではない
母はいつもこんな感じだ
肝心な局面ではドMになる
赤鬼みたいな父とは
食う者と食われる者の関係
ホント良いコンビだったね
どうでもいいのだけど
父に恫喝されていた
母はとても醜かった

そしてそんな時はいつも
傍らで泣いていた僕も
他人から見ればやはり
さぞ醜かったのだろうけど

目的を果たした僕は寺を背にすると
紫陽花の小道を駅へと向かった
後ろに母もいたようだが
もはや空気だった

その後横浜で中華を食べたのだが
丸テーブルに母がいたのかどうか
良く思い出せない

最近ふと考えたりする
あの時僕が縁を切りたかったのは
そう
父ではなかったのではないかと





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