鎌倉 縁切り寺/和田カマリ
 

あの部屋は格好の隠れ蓑だった

母と違い保証人になっていない僕は
法律的に何の義務もなかったけど
他に建設的な何かを行なう元気もなく
借金を毎月返済する事だけが
生きている証しみたいな気もしていた

母はそんな僕の態度に
なんとなく気付いたのか
「縁切り寺に行こう。」
出し抜けに電話してきて
「あの幸福破壊魔との悪縁を切ってしまおう。」
かなり息巻いていた

そんな経緯から無様な二人は
本当に久しぶりに会って
雨の中を黙ってその寺を目指していた

ようやく目的地に到達した僕達
線香の煙が雨の粒子に当たり
変な形で薄っすらと空気に溶けていた
そこはど
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