空舟は希望する(うつおぶねはきぼうする)/こしごえ
る
その青年の腹部は硝子製で
私は最早ひびわれてしまった青年だ
私の祖母は、母の母の母の母の母の母の母の母の母の……母になった
がらん、と、したところに母の声だけがわれた
そして私は、生まれた
宙を切る声
昼下りの小道に風鈴屋は消える
そのようだ、絶望を喪失したの
終わりの始まり静けさは金魚鉢
御中の減って鳴る 千草の風
風色は兆し遠雷の
骨無しのかなしみに
鉄筋をつらぬく
空舟。
みずから発光する
光速の
源は井戸を掘りかたむき続ける
女郎蜘蛛は糸を繰り黙読する
暗雲は、ぴしゃり、と解けて散った
虚空を
名前を忘却した反射鏡の
首輪には
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