言いたかったことはぜんぶ、/飯沼ふるい
びれたことがあったのだけど
言葉は
猫が腐っていく時間の中に
溶けていってしまう
てくてくと坂を下るに連れて
次第に大きくなっていく海が
探し物はなんですかと訊いてくる
たしかに見つけにくい物なのですが
入道雲は、じっとしている
海は
途方もなく穏やかで
外国から来たらしい
プラスチックの漂流物でさえ
憎たらしくも風情を湛えていた
僕も負けじと
風景の一部になろうとして
煙草をくゆらせてみるが
渇ききった喉に
煙草の煙がへばりついて不味い
裸足になって砂を踏みしめる
あたたかくて柔らかい
あぁ、これは、
言えなかった言葉の感じに
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