博愛テニスラケット主義/カンチェルスキス
 
ージの試食コーナーで、爪楊枝の刺した細切れのソーセージをふくれっつらで買い物客にふるまっていた頃のことだ。わたしは客として訪れ、いっぺんでいいからそのポケットのぞかしてと言った。ドラえもんは自分の指先でOKサインを作った。(そう言えば、昔からあの丸々としたお手手だった)。おれは鶏釜飯の素を買うのが目的でスーパーにやってきたのだが、ドラえもんの四次元ポケットをのぞいていた。暗闇だった。ドラえもんはおれのために室内灯をつけてくれた。やっとずっと底のほうに箱が見えた。ユンケルという文字があった。箱だった。おれは四次元ポケットから顔を上げた。ドラえもんが苦い顔をした。おれはわかっていた。彼がなんでこんな顔
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