戯曲(習作つづき7)/星☆風馬
 
津、詩朗読
他の4人、手を合わせ墓に祈る

奈津 「風の偏奇   
    
    風が偏奇して過ぎたあとでは
    クレオソートを塗ったばかりの電柱や
    逞しくも起伏する暗黒山稜や
    (虚空は古めかしい月光にみち)
    研ぎ澄まされた天河石天盤の半月
    すべてこんなに錯綜した雲や空の景観が
    すきとおって巨大な過去になる
    五日の月はさらに小さく副生し
    意識のように移って行くちぎれた蛋白彩の雲
    月の尖端をかすめて過ぎれば
    そのまん中の厚いところは黒いのです
    (風と嘆息との中にあらゆる世界の因子が
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