Like Someone in Love/Debby
 
ら農家かなにかから強奪したんじゃないかと思う。それを責めるような人たちがこの文章を読んでいるわけがないから、僕はいつだって安心してモノを書ける。

 目を覚ますのはいつも夕暮れの少し手前だ。三月の風が冷たくなり始める午後四時くらい。そして、東に向かう。井の頭通りを果てしなくまっすぐバイクで走る。時々は途中でコーヒーとトーストを齧る。そして、明け方に同じ道を戻る。こういう生活を続けていると、そんなに思い出すことも少なくなった。とにかく何かをしなきゃならないというのは素敵なことだ、とにかく僕はラグー・ソースとチリコンカンを煮込まなきゃいけない。ナイーヴな悩みに身をゆだねている時間がない。おかげで、
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