川柳が好きだから俳句を読んでいる(8、古家榧夫のこと)/黒川排除 (oldsoup)
 
らそうでなく、実際は死に対しての深い執念を感じさせる内容だったということ。とはいえ自殺はしていないしむしろ外見上内田裕也のような老け方をしていたのでクールである。第一句集の題名が単独登攀者、雪山の句が多く、夫人のスキーエピソードからもわかるように、同じ水分とはいえ雪山と死を連関させており、身内の死がその思念をなぞり、凍った目玉はやや虚ろに現実を捉えている。

 珈琲熱くちまたの夏は生きてたのし
 夕闇は波なして来ぬ雪に佇つ
 棒になる脚を脳天に感じてゐる

 凍ったと言おうか、それとも麻痺と言おうか。山が雪に覆われることを雪に閉ざされるとも表現するように確かに閉ざされた雰囲気は持ってい
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