川柳が好きだから俳句を読んでいる(8、古家榧夫のこと)/黒川排除 (oldsoup)
 
ているものの、わずかに内側へのベクトルと感じるのだ。内へと閉ざされ、外へと麻痺している。現代の感覚に麻痺することでじぶんに残されたものや感覚を守っているかのようだ。内側へのぬくさに目を開きながら、その目で見つめる現実はやはり温度差があり虚ろなのだ。こういったやり方で内側に生命の火をともしつつ外側と現実を死で接着している。楽しい一人旅というものもそういった感情に支えられてはいないだろうか。あくまで荒涼とした知らない土地で、人間のコミュニティに飛び込み、人間という雪で閉ざしてしまおうというのだ。

 エリカ香る嵐呼ぶ雲は我をも喚ばう
 古き船出君よ歌へヴァイキングの古謡を
 運河野を焼きて水鳥の中に棲む

 古家榧夫は一人旅を愛したという。しかしそれは孤独を愛したのではない。孤独の外側にある荒涼とした欠落を愛したのだ。それが一般的には死と呼ばれていただけの話だ。
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