川柳が好きだから俳句を読んでいる(3、赤尾兜子のこと)/黒川排除 (oldsoup)
 
絡め不穏な病態を漂わせながら、唖と石で韻を踏みリズムを整え、あまり頻出しない「ぬ」を後半ふたつも差し込むことにより病態を吐き気のする物体にしている。この論理の飛躍のうちに込められた無意識的なリズムと自嘲的な病態は彼を病原体のように位置づける。

 広場に裂けた木 塩のまわりに塩軋み
 煌々と渇き渚・渚をずりゆく艾(もぐさ)

 また露骨なトートロジーも彼の味わいのひとつである。リズムを踏むとき、先程のように読者に軽く気取られることのないような位置に、作者ですらも無意識的に配置するのが常なのだが、彼ときたら、もう彼ったら、塩ときたら塩なのである。後の句はもっとすごい、ナギサ・ナギサ・モグサ
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