深夜のナポリ譚/faik
見せてきたわけですので、ここで私ごときがつまらない意地を張ってその気持ちの昂りに水を差してしまっては悪いと思い、けれど、やはりどう頑張ってみても私の気持ちは瞬時にナポリ方面には傾きそうにもなかったので、あえてぼんやりと、お相手の方が三十年弱の人生で培ってきたであろう読心術を信じて、ああこの子はナポリタンが好きな子じゃないんだな、それじゃあ僕は明日ランチを約束しているみかちゃんと一緒にもっと美味しいナポリタンをつつくことにしよう、とまあ、このように考えてくれると信じて、たまになら食べてもいいかもね、と。そう言ったわけなのですが。
「――うん。やっぱりおいしいね、ナポリタン」
ど
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