桃色の泡を吐き出す世界ではみどりの魚も赤く熟した/木屋 亞万
 


繰り返し毎晩思うすこやかに眠ることこそ生きるすべてだ

スピンアトップ急いで回るコマは立ついつかは春で口を漱ぐさ

ゆらゆらと空気が流れていることと半透明の影とストーブ

さらさらのさら地になってしまったよきおくをけされた気ぶんになるね

髪の毛がそっと私の盾になる雲に隠れた月は見えない

僕が見た途端に動くトトトトと正確を期す電波時計か

酒漬けの葡萄をつかむ指先の光沢を増す爪の横顔

蜜と唾出会い溶け合う心地まで舌からじとり沁みる慾望

生きたまま消化器という魔窟から抜け出た乳酸菌は語る

気を急いて剥いだことへの後悔と生ぬるい汁と透明なゴミ


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