アンテーゼという娘の物語/凪 ちひろ
ほら穴
火を炊く場所も 眠る場所もある
彼女は一人で暮らし始めた
ある晩美しい青年が訪れた
二人はすぐに恋に落ちた
けれどもアンテーゼは青年が
満月の夜にしか現れないのが不思議だった
青年の正体は狼
魔女に魔法をかけられた狼
魔女のごちそうを横取りした罪で
満月の夜だけ人の形を取る
そんなことを知らないアンテーゼは
ある日青年の後をつけて行った
たどりついたのは 狼の巣
夜はとうに明けていた
青年の姿はなく
たくさんの狼に切り裂かれながら
アンテーゼは永い眠りへ
次の満月の晩
青年は アンテーゼの骨を
しゃぶっていた自分に気
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