アンテーゼという娘の物語/凪 ちひろ
に気付いた
絶望した青年は
彼女と過ごした あのほら穴へ
そこにはもう 誰もいない
前の月の晩 二人で囲った火の跡が残っていた
泣き疲れた身体を引きずりながら
青年は自分の運命を呪った
そのまま森で 一番高い崖へ
満月の下 谷へ飛び降りて行った
宝石に興味のないアンテーゼ
満月の夜だけ 彼女を想う狼
人の心を昔失くした魔女は ただ微笑みを浮かべていた
はみ出した者に 行き場はないの?
あのほら穴の中の時間だけが 楽園だったの?
回る 回る 救いのない輪舞曲(ロンド)
あのとき彼の後をつけなければ
あのとき正体を明かして
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