アンテーゼという娘の物語/凪 ちひろ
 
に気付いた

絶望した青年は
彼女と過ごした あのほら穴へ
そこにはもう 誰もいない
前の月の晩 二人で囲った火の跡が残っていた


泣き疲れた身体を引きずりながら
青年は自分の運命を呪った
そのまま森で 一番高い崖へ
満月の下 谷へ飛び降りて行った


宝石に興味のないアンテーゼ
満月の夜だけ 彼女を想う狼
人の心を昔失くした魔女は ただ微笑みを浮かべていた


はみ出した者に 行き場はないの?
あのほら穴の中の時間だけが 楽園だったの?


回る 回る 救いのない輪舞曲(ロンド)


あのとき彼の後をつけなければ

あのとき正体を明かして
[次のページ]
戻る   Point(4)