白紙の日記/御飯できた代
さえ、芳郎の言葉を拒否しているようだった。
「八重子、君にはわからないかもしれない。
なんてったって、君の世界はこの部屋だけだ。そうだろう。でもね、ここ以外にも、世界はあるんだ。たくさん、たくさんだ。それはもう、星の数ほど。わかるかい?」
「いいえ、わからない」
八重子は言った。その一言は恐ろしく部屋になじんでいた。芳郎の額には汗が滲む。
「それでいい。今はいい。ただ、聞いてくれ。少しだけ聞いてくれ。僕は知っているんだ。世界がたくさんあるってことをね。八重子が知らないことだ。無理もない。お前はまだ15年しか生きていない。僕は君よりも十以上も離れている。だから知っているんだ。だか
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