白紙の日記/御飯できた代
うに、こうやって書いておくんだよ」
白の多いぎょろぎょろした目に涙を浮かべて、芳郎は言った。武骨な指いっぱいに、力を込めるものだから、筋肉質な腕は小刻みに震えていた。
「そんなもの、取り出すことに意味はあるの?」
まっすぐに八重子は芳郎を見る。
「あるさ」
さも当たり前のように、芳郎は言った。
その時、部屋はしんと静まり返った。芳郎は背筋が冷たくなるのを感じた。誰も、受け取ってくれない、大胆なエラーボールを放ってしまった。そんな感覚を抱いた。八重子の部屋の調度品の一つ一つ――暗幕や、天蓋のついたロマンチックなベッド、彫の美しいクロゼットや、彼が座っている椅子でさえ
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