ある時友達が欲しいなら、と言われた/すみたに
た手が、ナイフで、丁寧に剥いている。
皮と実の間で滲む、嗅いだこともない甘さが
くどくどしく、痺れるような、
そして、
それは息遣いの耳障りな、鼻歌に変わった。
わたしの手がおかれた黒いテーブルに、飛び散った水滴。
狂乱している金魚が、鉢のなかで鰓を解放する。
つまらない、布団の中では、
ああして眠りとは違う、冷やかな喉のいがらを味わっている。
その朝方わたしは臭かった。
人混みに身を曝せなくて、電車はやめて歩いていたが、
やがて疲れたわたしは、重心を捉えきれない足の運動に任せた。
道端、零れたジュースでべとついた、ベ
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