おおきな樽の小部屋にて/すみたに
迷うことしかできない街で
わたしは歩くと決めたんだ
歩いて行って、
間にあわないのではないか?――
そんなこと 行くなら勝手に待っていろ
遅刻するしかない約束のため
わたしは歩くと決めたんだ
雨垂れ清音の残照のもと
最新版の地図もって歩きはじめた
けれど行こうとすれば
行けども行けども 行きそこねる
街、それは気分屋で 空白を増殖させる
わたしの記憶はどこ と尋ねる、番地に
あなたはどこ と尋ねる番地に
やがて気が付く
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