/鯉
腰の辺りに立ち並ぶ屋台でべっこう飴を買うと親爺が「今日も一段と綺麗だねえ」と下卑た目で死骸を見ながら渡してくる。べっこう飴は均一に金色に覆われていて輝いていた。陰毛を噛み潰しながら通りを抜けて家の鍵をポケットから取り出すと襲われまいかと早急にドアを開けて閉めた。中には少女の死体がある。冬だったのか、黒色のセーラー服を着ていて、血が流れていた痕跡だけが首筋に残っている。顔は戦闘間際のインディアンみたいにところどころ黒ずんでいるが、もともとは白くて綺麗だったことを想わせる。睫毛が蝶の触覚みたいに跳ね返っている。四畳ばかりの部屋を満たさんばかりに少女の広がりは、虫の羽音も聞こえさせないがしゅーだのふぅー
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