白いボールのファンタジー/有無谷六次元
 
目も右目も潰れたヤギとキリン 高く弾んだ二遊間のゴロ


油絵の青が背筋をなぞるので毛布にくるまり三塁を蹴る


こおろぎが羽擦る夜の火葬場に燃え残った片端のレガース


砕け散る時間 軋みだすこころ スライディングはまぶたに刺さる


ぼんやりと壊死した指から放たれるひよこはいつもシュート回転


魔女狩りで死んだ人たちの口笛がホームベース型の染みになる


虚無僧が盗まれた塁を見ている 帰り道が思い出せないのか


ひとりでにやぶけた物理の教科書はキャチャーミットに吸い込まれたまま


ゆく道のすべてが悲鳴であるように 弾丸ライナー さそりの心臓
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