(批評祭参加作品)観察することば/石川和広
 

 ひどい夢を五つ以上みて
 そのたびに目ざめ
 舌打ちしてまた眠る
 だるくてふきげんでよろよろ起きる朝 
 歯をみがいて口を漱いで水を吐くと
 泡ができて
 そのたくさん泡のひとつひとつが眼のように
 おれをにらんでいる


そして最後の節を引用する


 交差点の信号の雪の舞うなかの
 赤
 そんな夢をみたいものだよ
 

ここには、感情的になりながら、その自分を「観察」しつつ、生きる、そのいきていることを見つめ続ける激しい情熱を感じる。ただし海軍で彼は敵軍の通信傍受がかりだった事実も、そこに付け加えておかねばなるまい
それは、彼が、妻と子を失ってから
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