ひとつの場所へ/empty
昔通っていた学校の寮のシャワー室で
薄汚れた遮断カーテンを引き裂いて
記憶は水のなかに消えてしまう
だから
わたしはまだ
生きている
現実はいつも
夢から夢へと引き裂かれた自我を
空間へと落とし込んでいるから
まだ
つぶらな
瞳の翳りに気づかない
きみを見ている
ささやかな
営み
ただひとつの場所へと
もんどりうって
消火栓は三階から
転がり落ちていった
白い粉を拡散させて
蛾が飛んでいる
蛇口から水がずっと流れている
誰
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