/鯉
学校には行っていたけれど、目が悪くて、けれど眼鏡がなくて黒板が見えないからずっと寝ていた。図体ばっかりでかかったから、いじめられることはなかった。
「死ねないかな」とか、Gが言って、リストカットの跡を見せてきたのは冬ぐらいだった。真新しいのがひとつふたつみっつ。そういうものか、ぐらいの感触しかなくて、おれはどうにも反応がしにくかった。「もう少し深くやればいいんじゃない?」「うん、そうする」Gが玩具をなくした子供みたいな顔をした。その頃はまだ金髪じゃなかった。顔立ちはまだ幼くて、ボーイッシュに切った短髪が、猿めいていたおれにはどうも心地よかった。Gと話した内容を覚えているは、この瞬間ぐらいだ
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