真夜中の岸辺/伊月りさ
 
しの
あなたの背中なのだから
もっと 逃げてください、
できるだけ まっすぐとおい空へ、
まっすぐに、
届いていかない
この声帯を
おもりをくくって鍛えなければならない
おもりをくくって
沈めたい、
  濡れたい、
    ひとり でもいいのかもしれない、
    ということを わたしたちは共有したほうがいいのだ

この水の緑が山々をうつしているように
指先は語り続けている
わたし以外のすべてに向かって
わたしが知りえないすべてで
それは
すくっても、
すくっても、
このてのひらを揺らすだけで
あなたを確認するためには
その頭から爪先までを裂いた血では
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