あんな思い出のせいだろう/飯沼ふるい
う
いつも雲のかかっていた山峰の代わりに
目の前に聳えるプラント群は
その形状を超えた物性を持たずに機能し続けている
あらゆる情緒を排斥する
ヒュームと油と猛々しい機械音とにまみれて
私というものを機能させ続ける一日
そうして次第に手足は化石になっていく
(今
浄土平へ向かう道すがら
荒廃した黄土の大地のそこかしこから
耐えることなく鼻をついてきた
嫌みたらしい硫黄は
脱硫装置で分解されている
新しい生活という
触媒に曝されて
サルファー
そのような名の無機的な物質として
タンクの底に沈殿している)
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